ours(恋をしても2)




最近、っていうかここ数日。秋也の自分に対する態度がおかしい。

変っていうんじゃなくて・・・なんて言うか・・・その・・。

距離がある感じ。

何か怒っているんだろうか・・。

俺、また気付かないうちに秋也のこと怒らせ、た?

でも、いくら考えてもそれらしい出来事が浮かばない。

きっと・・俺何かやっちまったんだろうけど。

でも、やっぱり分らない。

秋也はいつもどおり「おはよう」って言ってくれる。

だけど、どこか何かがいつもの「おはよう」じゃない。

俺が知ってる「おはよう」じゃない。

小さな仕草。

ふとした態度。

そのどれもが、今までと少し・・・でも確かに何か違っている。


そのことに気付いてからよく眠れない。


考え出すと止まらなくて、でも分らなくて黒い不安の波に呑まれる。

・・・秋也。

きっと明日の朝になればいつもの秋也に戻っている。早く朝になればいい。

俺の考え過ぎなんだ。

悪い癖だと叱られた。

マイナスに考えるなと教えられた。

だから、きっと・・・!自分に言い聞かす。

そうして数日が過ぎたけれど相変わらず秋也の態度には違和感があった。

「どした?顔色悪いぞ。」

そう言って秋也が大きな手のひらで自分の頬に触れてくる。

本当なら何よりもホッとしてその温度や感触に心が温まるのに、温まるはずなのに・・・・どうしてどこか違うと感じるんだろう。

よそよそしく思うんだろう。


イヤだ・・・秋也。


形のない不安にバカなくらい怯える。

自分って人間の弱さが嫌になる。


『何があろうと、俺は絶対だ。ウダウダ言ってねーで俺だけ信じてろ。』


あの言葉さえ、今はおぼろげで不確か。

今日こそハッキリ確かめよう。

今日こそ、問いただそう。

きっとバカな不安だと笑ってくれる・・。笑い飛ばしてくれる。

今日こそ、今日こそ・・・。

・・・なのに、確かめることが怖くていつしか俺は秋也の顔色を伺うようになってしまった。親父の顔色を伺うことが日常だったあの頃。迂闊な事を言わないように、機嫌を損ねないように・・・俺は相手の顔色ばかりを気にしていた。秋也に対してまさかそんな事をするなんて俺は最低だ。

自分は本当に救われないと思う。

「フロ、先入るかー?」

そんなさり気ない問いかけにも、言葉が詰まる。

「い、い・・・。」


話したいのに。

呼吸みたいな当たり前の会話をしたいのに。

一体今まで俺はこの人とどうやって会話してきた?

俺、今まではちゃんと話せていたんだろうか?

何を話していいのか分らない。

言葉の始まりが分らない。

言葉の・・・始め方が分らない。


もう声が、出ない。


秋也・・・。


今、何を考えてる?

その表情の下で。

本当は何を思ってる?

通じない心の奥で。

その言葉は真実?

どれが本当でどれが嘘?









俺の態度がぎこちないのが伝わるのか、正斗はこのところめっきり俺に話しかけなくなった。

そりゃ、伝わるよな。

俺ってウソつけないタイプだし。

取り繕っても結局ムカつきが態度に出んだよな。

ダメだダメだって分ってんだけど・・・正斗に怒鳴ってもしょーがねーし。


数日前。

正斗は平野に送られて帰宅した。

男が男を送るか?フツー!!

「待ち合わせ通学」もいい加減有りえねぇって思ったけど、それ以上だろ。

ハッキリ言って不快感もレッドゾーンだ。

こう見えて俺も大人だし、オンナじゃあるまいしイチイチ細かいことを言いたくない。言いたかねぇけどよ。


次やったら殺すぞ、平野。


消化不良の苛立ちを抱えて過ごすのはなかなかにストレスだ。

こっちの顔色を伺う正斗も気に食わない。

俺を怯えた目で見んな。俺をそんな目で見るか?


どいつもこいつも胸クソ悪りぃ。





・・・・・俺は寝苦しさに何度目かの寝返りを打った。

「チッ・・。」

水でも飲もう。

カーブした階段を下り、階下へと下りる。

大容量のUS規格の冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを掴むとキャップを捻った。

ふと何かの気配を感じてリビングのソファを振り返った。

・・・そこにはぼんやりと正斗が座っていた。

「・・・オマエ、こんな時間にナニやってんの?いい加減寝れば?」

悶々と眠れなかったせいで自分でも言葉の中に棘を感じる。

下らないと分っていても頭より感情が勝手に動く。感情を投げてしまう。

そんな俺を正斗はぼんやりと見上げた。

何かをあきらめたような・・・悟ったような顔で。

俺はその表情に思わず息を呑んだ。


正斗・・・。


そんな俺にアイツはコクンと小さく頷くと自室へと階段を上っていった。正斗のスラリと均整の取れた背中が掛けようとした声を遠ざける。




そのまま、朝になるまで俺は正斗が出て行ったことに気付かなかった。

朝陽が昇る前の午前4時、俺は冷たいままの正斗の部屋に1人立っていた。














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