mine(恋をしよう4)




「服・・・・脱いで見せてよ。」

自分がいかに残酷なことを口にしているか分かっている。

でも、秋也は敢えて正斗に依頼した。自分で服を脱ぐことを。

「え・・・・・?」

嘘だろ?そんな色をした漆黒の瞳が怯えたように秋也を見つめた。

「全部、脱いで見せてよ。」

その言葉にカッと正斗の顔に朱が差した。視線がシーツの上を不安気に泳ぐ。

秋也は決意したかのように正斗を放して立ち上がると、正斗の目の前で自分が着ていたシャツをざっと勢いよく脱ぎ捨てた。

そのままフローリングの床にそれを放り投げる。

テニスの合宿から戻ったばかりの秋也の身体は、5月とは思えないくらい褐色に焼けて艶がある。

それを目の端で見てしまって正斗は思わず目を逸らした。

この秋也の前で服を脱ぐなんて出来るわけが無い。根深いコンプレックスが自分と対照的な秋也を感じてますます深くなる。

「早く、脱げよ。正斗。」

出来ない!

秋也は顔を伏せて表情を隠すと唇を噛み締めた。

出来るわけが無い!

秋也は、正斗のベットの端に腰掛けて自分のつま先を強い表情で眺めながら、正斗の戸惑いをひしひしと感じていた。だが、後に引く気は全く無かった。

「ほら、早く。」

真っ直ぐに視線をぶつけられて正斗は息を呑んだ。まだ昼間なのだ、この白日の下に自分の醜い姿が曝け出されるなんて我慢できない。絶え難いことだった。

「さみーよ。風邪ひいちまう。」

おどけた秋也の言葉にも真剣な響きしか感じられない。

正斗は奥歯を噛み締めながら、それでも・・・ためらう自分を押して最初のボタンをぷっと外した。

一つ目のボタンを外すと不思議と微かに―――何かが吹っ切れた。

ギシッとベットを鳴らして秋也が服を脱ぎ始めた正斗に近付いた。正斗の脇に片手をついて間近で正斗の指先を見つめる。

まるで初めてボタンの掛け方を覚えた子供が、のろのろとボタンを外すかのように正斗は一つ一つを決意して外す。

そんな正斗を見ながら秋也が優しく囁いた。

「絶対、怖くしないから。・・・・俺は、絶対おまえを怖がらせるようなことしないから。」

ゆっくりと正斗の目線が上がって自分を覗き込んでいる秋也のそれとぶつかった。

揺れる漆黒の瞳。その奥で多分計り知れない感情が葛藤している。

「約束。」

その言葉は正斗の唇の真上で囁かれた。正斗の唇に秋也の言葉の振動と秋也の唇の感触が同時に重なった。

びりっときつい痺れが身体を走って正斗の肩がすくみ上がる。

それに気付いた秋也の唇が、柔らかく、柔らかく・・・・なだめるように、慰めるように・・・正斗の唇をなぞる。

秋也の熱い吐息が頬や顎にかかって堪らずぎゅっと正斗は目を閉じた。

しかし、目を閉じると一層感覚が鋭く、敏感になる。世界が秋也一色になる。

もう、いっぱいいっぱいで耐え切れなくなって今度は薄く目を開けると、ぞくぞくするくらい色気のある秋也の目が待っていた。

それが合図だったかのように秋也の熱い舌先が正斗の中にためらい無く伸ばされた。

「!!」

秋也は口腔の奥で萎縮している正斗の舌をすくい取るように自分の舌に絡めると甘く吸い上げた。

「ふ!・・・っん・・・ぅ、ぅっ!」

ぐっと正斗の腰を秋也が片手で自分に引き寄せる。

そのまま秋也はボタンが全て外された正斗の上着を力強く剥ぎ取った。

ハッと正斗の身体が緊張するのが伝わってきた。が、すぐにそれはキスの熱に浮かされてとろとろに蕩けてしまう。

秋也は正斗の腕を取るとその身体をベットに押し倒した。

正斗のストレートな黒髪が枕の上に乱れる。

そんな正斗を秋也は真上から見下ろして、隅々まで視線でゆっくりと身体をなぞった。

正斗の腕を頭上に押さえつけて隠すことを許さない。

正斗はきつく目を閉じて秋也の視線に耐えていた。先ほどのキスの熱と見られる戸惑いが正斗の中で渦になる。

ふっと正斗の身体に優しい指先が触れた。

「これ・・・・・どした?」

秋也の声にゆっくりと正斗の漆黒の瞳が開かれる。

秋也の指先が触れているのはちょうど右肩の下にある大きな裂傷跡だった。

「どした?」重ねて聞く秋也に、なんでもないことのように正斗が答える。

「・・・・・・・中学の時に、窓の外へ突き飛ばされたんだ。その時、窓ガラスの破片が刺さって・・・・。」

秋也の瞳がやり場のない気持ちで大きく揺れた。

つうっと鳥の羽が触れるみたいに・・・・そっと、そっと・・・秋也は指でその傷跡をなぞった。まだ生々しい痛みを訴えているような傷跡を。

思わず、それに正斗は息を止めた。

それがあまりに甘くて。

ゆっくりと正斗に覆い被さると秋也はその傷跡に強く口付けをした。秋也の明るい茶色の髪が正斗の胸元で揺れる。

「っ・・・・!」

正斗は瞳を潤ませて顔を背けた。

秋也が唇を放すとそこには熟れた果物みたいな赤い痣・・・・キスマークがついていた。

「こっちは?」

今度はわき腹の火傷跡に触れた秋也が再び問い掛ける。

「・・・・・・・・・・・覚えて、無い・・・多分すご、く、小さな頃の、・・・。」

その言葉を聞きながら秋也は濡れた舌先を無残な傷口に伸ばす。

柔らかく濡れた舌が踊るように傷の上を何度も這いまわる。傷ついた動物が傷口をそうするように、秋也は正斗のわき腹を何度も舐め上げた。

「・・・は、・・あぁ・・ぁ、ぁ・・・・。」

知らず知らず自分から漏れる熱い吐息に正斗は気付かない。

そんな正斗をちょっと微笑んで秋也は見つめた。すごく敏感な正斗の身体。

「じゃあ・・・・・これは?」

最後に秋也が指差したのは秋也の胸の中央の傷跡だった。

「これは、どしたの?」

ふっと正斗の目が切なく閉じた。

多分、たくさんの傷のなかでも特に思い出したくもないものなのだろう。

――――――だから・・・・・・・知りたい。

話して、欲しい。二度と1人の心に仕舞い込まないように。

「・・・・怖く、無いから。」

秋也の声が、正斗の耳から心に優しさを送り込む。

「絶対、怖く無いから。」

――――秋也・・・・・。

「・・・・・・これは・・・・自分でやった。小学生の頃に・・・・・。楽になりたくて――――・・・・・自殺、しようと思ったんだ。」

俺、楽に、なりたかったんだ。

すごく、すごく、疲れてしまって、もうどうしても歩けなかったから。・・・・一歩も。

何の気力も無くて、願うのはただ楽になることだけだった。ただただ楽に・・・・楽に、なりたかった。

正斗の目からつぅーーーっと涙が流れた。

全てを告白し終えると、正斗は秋也に優しく優しく全身を抱き締められた。

溺れるかと思うくらいの熱をもった秋也の身体に包み込まれる。

「・・・・・・もう、大丈夫だから。」

低く囁く秋也の声が細胞の奥の奥まで染み渡る。

「もう、そんなこと、しなくていいから。」

正斗は自分の身体がふわっと温まるのを感じた。今まで知らなかった部分に優しいものが満ちてゆく。

「な、正斗。」

ずきずきと心臓が痛い・・・・・抱き締める腕が、胸が、声が・・・心まで締め付ける。

「俺が変えてやるよ、正斗・・・。辛い傷跡を『感じる場所』にさ。傷を見るたび俺に抱かれてる事を思い出して堪らない気持ちになるようにしてやるよ。」

身体の芯にボッと火が灯り、指先や髪の先端にまで火が走るようだった。

身体が、切なく火照る。・・・・・・・あき、や・・・。

「!!」

お、俺っ・・・・・・!

正斗はやっとのことで目を開けると、震える手で秋也の身体を押し返した。

「?」

そんな正斗を再び抱きしめようと秋也が手を伸ばすと困惑した正斗が微かに逃げる。

「・・・・・正斗?」

正斗は首まで真っ赤になって顔を背け、秋也を見ようとしない。

「・・・・・正斗?」

呼びかけるときつく目を閉じて秋也を避ける。

「・・・・・俺、おまえが嫌がるようなことした?」

秋也の言葉を強く首を振って秋也は否定した。

嫌がることなど何一つされてない。

それどころか、こんなにも自分を優しく扱う手を正斗は他に知らない。

「ちが・・・・・。」

優しくて優しくて・・・・・ものすごい貴重品に触れるみたいに労わってくれる。

「じゃあ、何?」

「・・・・・・・・。」

「・・・言わなきゃ、分からないだろ。」

「・・・・・・・。」

「―――正斗。」

やさしく自分を呼ぶ声に心は細く揺れる。

「・・・・・・・・だっ、て―――――俺・・・・。・・・・もう・・・・・。」

消え入りそうな正斗の最後の言葉に、秋也はちょっと以外な顔をした後で嬉しそうに微笑むと優しく深いキスを仕掛けた。

こわばる正斗の手をとって、自分の下半身・・・下着の中に導く。

びくっと正斗の手がソレを感じて驚く。慌てて手を引こうとする。―――――熱い。

「いんだよ。正斗は触っても。」

秋也は正斗の手に自分の手を添えて熱く滾っている自分の性の象徴に軽く押し当てた。

「同じだろ・・・・・?俺だってずっと勃ってるよ。」

言葉とともに、秋也の手も正斗の下着の中に伸びる。

「あ・・・・・・。」

やんわりと握りこまれて正斗は震えた。

「正斗も握って、俺の。」

直接鼓膜に囁かれて全身の力が抜けるかと思う。

秋也の声・・・・全ての理性を溶かしてわだかまりを流しさってしまう。

正斗は恐々秋也の分身を手の中に包み込んだ・・・・・・それは、今にも弾けそうに隆々と力を持ち硬く筋張っている。

「ぁ・・・・・・っく・・・。」

秋也から押し殺した声が漏れた。

「おまえに触られるってだけですげークる。・・・・やばいよ、イキそ。」

実際、正斗の手の中で秋也はビクビクっと強く跳ねた。

きつく眉間に皺を寄せてうっすら汗を滲ませる秋也の顔に、正斗の下半身にも血液が一気に集中した。

秋也の手の中でぐっと大きさを増した自分を感じる。

きっと、秋也にも全部伝わっている。隠し様もない。

秋也が自分にこんなにも感じているということが、今度は正斗自身を感じさせてしまう。―――身体が、まるで共鳴しあうみたいに。

正斗は秋也の手の中でトロトロと蜜を零しながら甘い苦しみに仰け反った。

握られたまま下着まで全て剥ぎ取られる。

鎖骨からみぞおち、茂みまで隈なく秋也のキスが落ちてくる。緩く上下にしごかれ始めると正斗の目には涙の粒が膨らんだ。

「ンッ、ンッ、ぅん、・・・っ!」

必死で声を耐える。

鈴口を優しく割られて腰骨に激しい痺れが起こると堪らず腰がヒクついた。

「だめだ。正斗、声殺しちゃ。」

敏感な先端を揉み込まれて内股までがひくひくと痙攣を起こす。

「正斗、声。」

きゅっと切なく先端をつままれてそれにも限界が来た。

「あっ、ああーーっ!」

割られた鈴口からは透明な雫が絶え間なく蕩け出る。

「ひッ!!」

胸の尖りを甘噛みされながら、尿穴を指先で細かく何度も穿たれる。

「あッ・・・・・・秋也っ!だ、めッ・・・やめっっ!」

「我慢、出来ない?」

正斗はがくがくと頷いた、必死で喘ぎながら懇願した。止めてくれ、と。

しかし、秋也は嬉しそうに、止めるどころかますます激しさを増す。

もっと、・・・俺を感じて。

優しくうつぶせにされて双丘を深く開かれた。

今まで、誰にも見せたことの無い場所。きゅっと閉じているくすんだ正斗の菊の門はこの上なく可憐だった。

今にも自身を突き込みたい衝動を秋也は必死に抑える。

「はっ、はぁっ、はぁ・・・・・。」

全身で荒い呼吸を繰りかえしている正斗の、未知の部分に秋也は慎重に、優しく指を1本挿入した。

ツプっと熱い内部に秋也の長い指が飲み込まれてゆく。

「あーーッ!!」

初めての感覚に、何が起こったのか察知した正斗が大きく顎を突き出して背を反らす。

「あ、秋也!秋也!秋也ーっ。」

シーツを握り締めて懸命に自分の名を呼ぶ正斗が、真剣に愛しい。

「大丈夫、怖くないから。・・・・・リラックスして、正斗。」

正斗の腰を高く抱えると後庭を突き出すような形を取らせる。こうすると、一層深い部分に指が入る。

届く限りの一番奥まで秋也は指をねじ込んだ。

正斗の中は、熱い熱が渦巻いていて、扇動する内襞が圧迫感とともに絡みつき、秋也の指を押し戻そうとする。

それに逆らって、ぐっ、ぐっと何度も指を突き上げた。

「アアア―――――ッ!!」

正斗は必死でシーツを噛み締めた。

こんなに身体の奥に触れられたことなど無い。

「すごく、いい・・・・・・堪んないよ。正斗。」

掠れた声で囁きながら、空いた手では絶えず双丘を揉み解す。

秋也の指を秘門に深く受入れて、腰を激しく振り続ける正斗は、我を忘れてこの上なく綺麗だった。

世界中にただ1人俺だけだ、こんな正斗を見る人間は。

「指、もう1本増やすから力抜いて。」

ず、、と深く埋まっていた指を引き抜くと今度はそろえた2本の指を正斗の「場所」を探しながら送り込む。

と、途中で正斗が甲高い悲鳴を上げた。秋也は正斗が逃げないようにしっかりと腰を押さえつける。

「イっ、やぁあああああっ!!」

ソコを強く擦ると、正斗は泣きながら助けを求めた。

「助けて!助けて!そこ、嫌ーっ!秋也ぁ、助けて!!」

タスケテ・・・・。

それは幼い頃から、心の奥だけで叫んできた言葉。

どんなに虐待されても、正斗は涙を流したことは一度も無かったし、それを口にしたことも無かった。

しかし、今、秋也に甘く愛されながら正斗は泣いて夢中で助けを呼んでいた。

自分がどうにかなってしまいそうなのだろう、秋也は身体を突っ張って必死で強烈な感覚と戦っているようだった。

秋也が正斗の反応を見ながらソコを指で激しく穿つ。時に強く、時に指先をわざと振動させて。

ぐいぐいと高みに押し上げられる未知の恐怖に、正斗は秋也になおも助けを求める「怖い、助けて。」と。

「大丈夫だから。」

・・・・俺に飛び込んできてよ正斗。俺の前で弾けて見せて。

すさまじい射精感が身体の最奥から駆け登ってくる。自分で自分をコントロールできない。秋也の与える刺激に身体も心も従ってしまう。

「秋也、・・ダ、メ・・お、俺!――――――あっあッ!い、いく!あ、ぁーーーッ!」

泣きながら絶頂を訴える正斗を後から秋也は優しく抱いた。

「いいよ、イッて。・・・俺がついてるから、安心して。」

言葉とともに、秋也は正斗の中心に手を添えて、後ろに入っている指で勢いよく秋也のスポットを抉った。

「ひッ!!」

一瞬、息を詰めたのち、激しい嬌声とともに正斗は沸騰した白い濁りを一気に噴き出した。

「アアアーーーーーーッッ!!」

 

正斗が・・・自分の腕の中に落ちてくる。

深く、深く・・・・・・。

秋也の胸に愛しさが込み上げる。

 

「正斗の、中に・・・・入っていい?」

秋也の言葉に正斗はうっとりと頷いた。

正斗の膝をぐっと曲げて胸に押し付けると、正斗の秘門が伸縮を繰り返して熱く息づいていた。

「も、俺・・・限界。」

秋也がそこに、ローションを塗った震えるくらい昂ぶっている自分の男根を押し当てる。

こんなに滾った自分を知らない。

張り詰めすぎて痛いくらいだ。

優しく瞳と瞳が重なる。

「・・・・・・正斗。・・・・・・正斗。」

押し当てた自分自身に力を込める。

クっと正斗の顔が苦痛に歪んだ。

「・・・・愛してる。」

言いながら、秋也は正斗の中を頂点目指して突き進んだ。

「アーーーーッッ!!」

正斗は強烈な苦痛に堪えきれず、再び泣いた。

すさまじい圧迫感、内臓が裂けそうだ。

・・・・・・・・・・・・・・自分は、痛みに信じられないくらい強い。

苦痛はいつもすぐ隣にあったから。慣れ、になっていた。

だけど。

こんな優しい痛みにはすごく、弱くて。

愛される痛み。

受止めきれないくらいの、想い。

ダメだよ。秋也・・・・・・俺、こういう痛みにはスゴク弱いよ・・・・・・。

身体だけでなく、心まで開かれてしまうから。

もう、嘘なんかつけない。

今まで自分を縛り付けていたつまらない意地も、こだわりも、なんて小さく見えるんだろう。

閉じていた世界が開かれる。

―――――――痛みと熱を伴なって。

身体と心の1番深いところに、秋也の熱い想いが溢れるくらい注ぎ込まれる。

・・・・深く、満たされる・・・・。 

それを受けて、正斗は再び高まり、知らず知らず秋也の胸を白く染めていた。

 

 

 

 

 

「ただいまー。」

1週間ぶりの我家にみやげ物を抱えて彼女は慌てて帰ってきた。

雪崩れ込むように玄関へ急ぐ。

気がかりは留守宅に越してきたはずの大切な人の忘れ形見。・・・・・正斗。

「あれー。母さん、お帰り。」

呑気にポカリ片手に現れた次男にじれったい気持ちで飛びついた。

「崇!!お兄ちゃんは?!どこっ?!」

「にーちゃんって、どっちの?」

「どっちって、あなた・・・・・。」

その彼女の言葉を遮るようにして、秋也の大声が奥から響いてきた。

「捨てた、だとぉ?!」

「ああ、捨てたよ。」

「どーすんだよ、アレがねーとゼミに出られねーんだぞ。」

「秋也が悪いんだろ。ゴミと一緒に積んでおくから。」

「おーい、マジかよ。」

「毎日、毎日よく同じコトが繰り返せるよな。バグってんじゃないの?折角の新茶がマズくなるよ。」

それを聞いていた要領のいい次男は、あーあ。という呆れ顔でため息を付いた。

「毎日こうだよ。秋也にーちゃんのバカさ加減がすっげー引き立つ感じ。」

けけけっと笑う。

彼女は、目を見張った。

泣くことはおろか、怒ること、笑うことなどもっての他・・・・それが正斗という子だった。

その正斗が、笑っているではないか。

楽しそうに話している。

あんな表情を見たことが無い。

最初で最後、それを見たのは夏の海辺のベンチの上・・・・・秋也と並んだ写真の中に閉じ込められた季節のことだ。 

じゃれあう二匹の若い動物のような2人に彼女は目頭が熱くなるのを感じた。

「俺的には、断然、正斗にーちゃん派だね。正斗にーちゃんが来てから家の中に秩序ってもんが生まれたもん。秋也にーちゃんも言う事聞くしさ。あの自己中の典型みたいな秋也にーちゃんを上手くコントロールしてくれて大助かりだよ、ほんっと。」

言いたいことだけ言うとすったすったと部屋に戻ろうとした崇の頭を「ごんっ!」っと走ってきた秋也が殴りつけた。

季節はまた廻る・・・遠いあの海辺まで。

「てめー、なにチクってんだよ!」

「秋也!崇を殴るなよ!」

「かまうか!こんなガキ!」

「俺ホントのことしか言ってねーじゃんっ!」

 

 

 

閑静な住宅街に今年初めての夏日がやってきていた。すぐそこまで夏の匂いが近付いている。

川添家は今日も、明るい光に包まれていた・・・・・・・・・。

 

 

 













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